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僕は飯塚高史が苦手だった

僕は飯塚高史が苦手だった

飯塚さんが苦手だった。

ほとんどの人が知っているように、飯塚高史選手は昔、普通の選手だった。それもかなりイケメンのレスラーだった。いきなり変貌し今のような姿になった。天山広吉選手とタッグを組んだと思わせて裏切って……なんてストーリーはあるのだが、全部は書ききれないので、詳しくはWikipediaを読んでほしい。とにもかくにも、飯塚さんはベビーフェイス(善玉)からヒール(悪玉)になった。

当然ながら、ヒールになったばかりの時期というのが存在するわけで、僕はとくにそのころの飯塚さんに苦手意識を持っていた。

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凱旋帰国から

武藤、蝶野、橋本。いつまでもお前らに良いカッコはさせない!

武藤、蝶野、橋本とは、もちろん闘魂三銃士のことで、当時の新日本プロレスはこの3人を様々な手法で売り出していた。3人は3人で、持ち前のスター性を存分に生かし輝きまくっていた。「闘魂三銃士こそが次世代のエース」、誰もがこのように思っていた。

しかし、これに異を唱える男が現れた。そう飯塚選手だ。あまりに昔のこと過ぎて覚えていないが、海外遠征から帰ってきた直後、飯塚選手は上記のようなニュアンスの言葉をリング上から投げつけた。当時の飯塚選手は、正統派のベビーフェイスだった。短く刈り込んだ髪型、精悍な顔つきに均整の取れた体つき。闘魂三銃士路線にストップをかけるべくマイクアピールを行った飯塚選手は、間違いなくかっこよかった。本当に三銃士路線にストップをかけるのではないかとさえ思ったものだ。

そして、同期の野上彰選手、エル・サムライ選手とユニットを組み、三銃士世代に噛み付いた。野上選手と「J・J・JACKS」なるタッグチームを組み、タッグ戦線にも噛み付いた。さらに、「山崎隊」なるユニットを結成し、新日本プロレスにも噛み付いた。

だがしかし、悲しいかな。飯塚選手はまったく活躍することなく、いつしか中堅選手に甘んじる日々を過ごしていた。来る日も来る日も休憩前の試合。うん、たぶん存在が地味すぎたんだと思う。

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突然のヒールターン

そんな飯塚選手が、突如ヒールターンを行った。いきなり叫びだすは、言葉が通じないは、試合そっちのけでリング外を徘徊するはでてんやわんや。つまり、今の戦い方となんら変わりないスタイルへと変貌した。

ヒールターンしたのが2008年なので、そのときから今のスタイルを確立しているのが凄いんだけど、もっと凄いのは飯塚選手のなりきりっぷり。よくぞあそこまで変貌できるなというくらい、飯塚選手のヒールっぷりはリミットを外しまくっていた。

正統派だった飯塚選手はどこにもいない、すべて変わってしまったのだ。

でも、ただ一つだけ、変わっていないものがあった。

それは何か?

何を隠そう、この僕だ。

どこからどう見ても、「クレイジー坊主」と変わりきった飯塚選手に対し、僕だけが変わり切ることができていなかった。いきなり叫び、リング外を徘徊する飯塚選手を見ながら、どこか冷めた目で見る僕がいた。

なんか、無理してるなー

恐縮すぎて申し訳ないのだが、ヒールをまっとうする飯塚さんをこのような目で見ていた。自分の観戦スタイルを変えることができなかったのだ。

あまつさえ、場外を徘徊する飯塚選手を見ながら、「こっち来たら、どうしよう」なんてことも思っていた。そんなもん、悪役レスラーが襲ってきたら「逃げる」の一択なんだけど、当時の僕は、飯塚さんから逃げ惑うということに乗り気ではなかった。

なんだかね、ちょっとした反抗期。あの、飯塚選手から逃げる気になれなかった。だって、あの地味だった飯塚さんだよ……。

失礼なことを言っているのはわかっている。たぶん、自分に酔っていただけなのだと思う。反抗期だったのだと思う。こーき!こーき!はんこうき!!もう30歳すぎてたけどね。だから迫り来る飯塚さんに対し、「こっちに来ないでくれ」なんて感情を持っていた。

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飯塚さんが苦手だった

これが冒頭の言葉につながる「苦手」という感情。

僕は飯塚さんが苦手だった」です。

そんな僕の気持ちとは裏腹に、今度の飯塚さんのヒールっぷりは徹底していた。たぶん僕のような感情をもったファンは何人かいたはずなのに、飯塚さんは気にすることなくやりきった。後のインタビューで明らかになるが「善良だったころの飯塚高史の魂は等々力のほこらに封印したんだよ!」という言葉の通り、クレイジー坊主としてやりきった。

それから数年後、僕も失礼な苦手意識はどこかへ吹き飛んだ。僕も苦手意識を等々力のほこらに封印したんだと思う。等々力、行ったことないけど。とにかく飯塚さんを大好きになった。

そんな飯塚さんが今日、引退を発表した。引退は2月21日の後楽園ホール大会。さっそくSNS界隈では惜しむ声が溢れている。それと同時に最後は正気に戻るのかなんて声も溢れている。最後は正統派に戻って、魔性のスリーパーで対戦相手を締め落とす。なんだったら、ブリザードスープレックスだって出すかもしんない。

でも僕は思うんだ。きっと飯塚さんは正気なんて戻しやしない。魔性のスリーパーなんて出しやしない。スリーパーは、ちょっと前のあれで十分だ。最後の引退試合までクレイジー坊主を貫くんだと思う。なんだったら反則負けだってするかもしれない、自分の引退試合なのに。さらには、引退セレモニーで用意された花を振り回して観客席を徘徊だってするだろう。

それこそが飯塚さんのヒールとしての挟持。等々力のほこらに封印した善良な飯塚高史は封印されたまま。それで良いと思う。

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