流れの早い新日本プロレスで、確固たる地位を築く老舗ユニットといえば、「CHAOS(ケイオス)」です。
CHAOSはもともとヒールユニットでしたが、オカダ・カズチカ選手や中邑真輔選手(退団)らがファンの心をつかみ、新日本プロレスでも一二を争う人気ユニットとなりました。最近では、正規軍とタッグを組むことが多く、今後どのようにユニットが変化するのか注目を集めています。
今回は、新日本プロレスのユニット闘争で、常にイニシアティブを握り続けるCHAOS(ケイオス) を紹介します。
CHAOS(ケイオス) とは?
先に書いたとおり、CHAOS(ケイオス) は、新日本プロレス正規軍に対抗するヒールユニットとして誕生したユニットです。
当時ヒール軍団として活動していたG・B・Hから離脱した矢野通選手が中邑真輔選手(退団)と組んだのが始まり。何回かのメンバーチェンジを経て、今に近い形に落ち着いたのが、2015年ごろのこと。
もともと、ヒール軍団だったため、最初はブーイングを浴びることも多かったのですが、矢野通選手や邪道選手・外道選手がコミカルな一面を強調したこと、また、中邑真輔選手やオカダ・カズチカ選手といった人気選手を要したことで、次第にヒール色は薄れ、今では本隊を凌ぐ人気ユニットとなりました。
自分に嘘をつかずやっていたら、結果的にブーイングを浴びただけ。(矢野通)
ユニットとしてはヒールですが、ベビーフェイスに近いユニットが、CHAOS(ケイオス) なのです。
CHAOS(ケイオス) のメンバーは?
最初に、CHAOS(ケイオス) のメンバーを一人ずつ紹介していきましょう。
オカダ・カズチカ
今やミスターIWGPヘビーと呼んでも差し支えのない、CHAOS(ケイオス) の代表的な選手です。
長らく中邑真輔選手と人気を分けていましたが、2015年に中邑真輔選手がアメリカのWWEに移籍したことで、実質的なリーダーとなりました。
CHAOS(ケイオス) への加入は2012年のイッテンヨン東京ドーム大会の直後。
海外武者修行から凱旋帰国したオカダ・カズチカ選手を、外道選手がスカウトし、ユニットの一員となりました。あまり群れるイメージはありませんが、周囲の想像以上にCHAOS(ケイオス) への愛は強いです。
本隊の棚橋弘至選手との抗争が長かったため、立場的にはヒールですが、新日本プロレスで最も人気のある選手の一人です。
後藤洋央紀
加入歴が浅いながらも、CHAOS(ケイオス) のサブリーダー的な選手です。
IWGPヘビー級王座こそ獲っていませんが、その他の王座はほとんど獲っています。また、他の選手が使わない技が多く「牛殺し」やの「昇天・改」ような、一風変わった名前の技名を持ちます。
長い間、本隊の一員として活躍していましたが、2016年の春にオカダ・カズチカ選手に誘われCHAOS(ケイオス) 入り。ケイオスに加入してすぐに、IWGPインターコンチネンタル王座を獲り、2018年はNEVER無差別級王座も獲りました。
荒々しいファイトを武器に、もっと活躍してほしい選手です。
石井智宏
ケイオス結成時からのオリジナルメンバーで、荒々しい戦い方が特徴の選手です。
棚橋弘至選手、オカダ・カズチカ選手、ケニー・オメガ選手、内藤哲也選手など、新日本プロレスのトップ選手にはほとんど勝ったことがあります。とても寡黙で、あまりアピールを得意としないため、影に隠れがちですが、もっとも実力のある選手と言われています。
無骨な見た目からは、想像がつかないほどの潔癖症で、一度口を付けたペットボトルは、2時間以上経つと捨ててしまうそうです。
矢野通
崇高なる大泥棒と異名を取る選手です。
ユーモアたっぷりに相手選手を翻弄しながら戦うのが特徴。しかし、実は文部大臣から表彰を受けるほどのレスリングの実力の持ち主です。入門当時からレスリングの実力がずば抜けていたため、プロレス界特有のかわいがりも、ほとんど受けることがなかったそうです。
入場時には、自信がプロデュースしたDVDや書籍を宣伝し「1000枚買え!」とカメラに向かって迫りますが、それも新日本プロレスへの愛情のため。
コーナーマットをほんの一瞬で外す特技を持っています。むき出しとなった金具に相手選手を打ち付けようとしますが、逆に自分が打ち付けられることが多いです。
Y・T・R(ヤノ・トー・ルー)コールがお約束。
YOSHI-HASHI
地味ながらも、スワトーンボムやカルマなど、難易度の高い技を使いこなす選手です。
今は中堅どころに甘んじていますが、G1クライマックスやNEW JAPAN CUPでは大物食いをすることがあります。ただ最近は、新日本プロレスの厚い選手層に埋もれがちで、思ったような活躍は見せられていないようです。
オカダ・カズチカ選手とは、共に凱旋帰国マッチで戦い、ほぼ同じタイミングでにCHAOS(ケイオス) に加入したという共通点を持ちます。2人は、レインボー(Rain+棒)というタッグを組んでいますが、目立った実績を残せていないのが実際のところ。
「物事が変わるのは一瞬だ」「俺のハートは砕けたか?」といった名言(迷言)を多く持っています。
ウィル・オスプレイ
イングランド出身の、天才ハイフライヤーで、オスカッター、630°スプラッシュ、コークスクリュー・シューティング・スター・プレスなど、難易度の高い空中技を軽々と使いこなします。
ウィル・オスプレイ選手を理解するには、実際に戦っている姿を見るのが一番です。
いかがでしょう?圧倒されたのではないでしょうか。
2018年にはヘビー級へ転向。ヘビー級の体格を持ちながら、ジュニア並の空中技を使う選手となりました。
世界的にトップに位置する選手です。
ロッキー・ロメロ
キューバ出身で、新日本プロレスLATCH道場でトレーニングを積み、EWFのリングでデビューをしたプロレスラーです。
170センチと、レスラーとしては小柄ですが、そのぶんスピーディー。
「泣かすぞコノヤロー」や「チョーバカ」などと片言の日本語で対戦相手に精神的ダメージを与えることを得意としています。最近では、ROPPONGI 3K(後述)のマネージャーや、英語配信の実況として姿を見せることが多いです。
新日本プロレスとROHの仲介を果たすなど、謎の人脈を持っています。
バレッタ
ロッキー・ロメロ選手とのタッグ「ROPPONGI VICE」として活躍していましたが、ヘビー級転向により発展的解消。今はチャッキーT選手と「ベスト・フレンズ」を結成しています。
動けるヘビー級として、トップ戦線に割って入ることを期待します。
SHO(ショー)
2016年10月の両国国技館大会から加入。
海外から帰国後の初戦で、いきなりIWGPジュニアヘビー級タッグのベルトを奪取(パートナーはYOH)。
ジュニアの枠におさまらない、パワーが特徴です。
YOH(ヨー)
2016年10月の両国国技館大会から加入。
海外から帰国後の初戦で、いきなりIWGPジュニアヘビー級タッグのベルトを奪取(パートナーはSHO)。
YOH選手と同じく、ロッキー・ロメロ監督率いる、ROPPONNG 3Kとして活躍中。シリアスな試合からコミカルな試合まで見せる、変幻自在なレスラーです。
CHAOSを脱退した選手
長らく活動していると、ユニットを脱退する選手も多くいます。2018年にCHAOSを脱退した選手を見てみましょう。
邪道
数多くのインディー団体を渡り歩き、2001年に新日本プロレスに参戦。
デビューから一貫してヒール(悪役)として活動し、CHAOS(ケイオス) の他にも様々なヒールユニットに在籍してきました。
ヒールではありますが、コミカルな一面を見せることも多く、特徴的なのは時間差ダウン。これは、相手の攻撃を頭、もしくは顎に受けた後、数秒遅れてからダウンするというムーブです。
ももいろクローバーのファンとして有名ですが、最近ではあまりに立場を利用し、控室などに出入りすることから、「実はビジネスモノノフ(仕事上、ももクロファンを名乗っている)では?」と噂されています。
2018年には、相棒の外道選手と一緒にCHAOSを脱退(裏切り)し、BULLET CLUBに所属。それ以来、コミカルな一面は封印し、ヒール色を強く出しています。
外道選手とは、20年以上に渡る名タッグを組んでいます。
外道
邪道選手と同じく、多くのインディー団体を渡り歩き、2001年に新日本プロレスに参戦。
20年以上続く、邪道選手とのタッグでプロレス界の様々なタッグ王座を獲得してきました。長い間、オカダ・カズチカ選手の参謀として活躍していましたが、2018年に邪道選手とともにBULLET CLUBへと移籍。ジェイ・ホワイト選手の参謀として、オカダ選手を付け狙います。
コミカルな動きも見せますが、邪道選手よりはややシリアスな動きを得意としています。
とても強面ですが、実は下戸という一面を持っています。
ジェイ・ホワイト
新日本プロレスの道場で育った外国人選手です。2016年に海外遠征に旅立ち、2017年末に凱旋。帰国とともにヒールとなり、後にCHAOSに加入。しかし、2018年9月に、外道選手とともにオカダ・カズチカ選手を裏切ります。
10月には、棚橋弘至選手の持つIWGPヘビー級王座に挑戦しますが惜しくも敗退。その後、CHAOSと敵対するBULLET CLUBに移籍し、実質的なリーダーとなります。
2019年のイッテンヨン東京ドーム大会では、シングルマッチでオカダ・カズチカ選手から勝利。さらなる活躍が期待されます。
チャッキーT
数々の団体を渡り歩き、新日本プロレスの提携団体、アメリカのROHを経由して新日本プロレスに登場。多くのリングネームを持つ選手です。
バレッタ選手とのタッグで試合に出ることが多く、普段はバイブレイヤー的な動きを得意とします。しかし、2018年のWORLD TAG LEAGUE(ワールドタッグリーグ)から、しばしば試合中に突如キレて、非常な反則攻撃を見せるようになりました。
反則負けになることも多い、制御不能な選手です。
CHAOS(ケイオス) グッズが大人気
CHAOS(ケイオス) は活動期間が長いため、グッズの数も膨大です。
選手個人のグッズから、ユニットとしてのグッズなどいろいろありますが、ここでは定番のグッズを紹介します。
Y・T・R V・T・R Ⅵ ~そして伝説へ?~
グッズと呼んでよいのか分かりませんが、CHAOS(ケイオス) といえば矢野通選手がプロデュースする各種DVDが有名です。
リングではまず見られない、オカダ・カズチカ選手や後藤洋央紀選手の意外な一面が見られます。いつもさまざまな趣向が凝らされており、本作ではサンリオピューロランドをCHAOSのメンバーが訪れます。
矢野通「プレジデント」Tシャツ
独特のデザインのTシャツです。
矢野通選手を、世界の偉人に似せたTシャツは、「似てない、似てない」と言われていますが、けっこう似てるんじゃないかなと思います。
アメリカのシンボル「ラシュモア山」をフィーチャーしたTシャツは、プロレス会場でも目立ちます。ちょっと変わったオシャレを楽しみたい人におすすめです。
オカダ・カズチカ~I’m O.K.!
オカダ・カズチカ選手の写真集です。
インタビューなどのテキストページはまったくなし! 全84ページ(表紙含む)全てが、オカダ・カズチカ選手で溢れています。
珍しいのは、プロレスラーの写真集でありながら、リングコスチュームが全くないこと。定番のレインメーカーポーズもなく、ひたすらオカダ・カズチカ個人としての魅力が迫る最高の一冊です。
電子書籍「Kindle版」なら、Unlimitedに加入すると無料で読むことができます。これはかなりお得です。
ファンの支持を得すぎてしまったCHAOS(ケイオス)
最初に書いたとおり、CHAOS(ケイオス) は、新日本プロレス本隊に対抗するヒールユニットとして誕生しました。そのため、結成当初こそ真壁刀義選手を標的に悪党ファイトを繰り広げ、ヒールに徹しない内藤哲也選手や、カール・アンダーソン選手らは追放するなど、悪役らしい動きを見せてきました。
しかし、オカダ・カズチカ選手がファンの支持を得て、矢野選手らもコミカルな悪党ファイトを見せるにつれ、ヒールの色が徐々に失われるようになりました。
2014年4月に発売されたDVD「CHAOS結成5周年記念DVD Y・T・R的修学旅行」では、入浴シーンや寝起きドッキリが収録されるなど、コミカル色を前面に出したことで、ヒールユニットとしての色は完全に消滅しました。
もともとヒールとは言え、凶器攻撃やセコンドの介入などは良しとしていなかったこともあり、CHAOS(ケイオス) はヒールユニットでありながら、新日本プロレスの人気ユニットとして支持されるようになりました。
そのため、ヒール色の強い鈴木軍やBULLET CLUBと対戦するときは、ファンの声援を受けますし、時には本隊よりも支持されることも珍しくないのです。
新日本プロレスのCHAOSとして
CHAOS(ケイオス) が結成されたは2009年のこと、流れの早い新日本プロレスで、ひとつのユニットがこれだけ長期に渡って固定されるのは異例のこと。
CHAOS(ケイオス) は核となるメンバーは固定されていますが、ベビーとヒール両方の側面を持つため、イメージが固定されないことに理由があるように思います。その時ごとに、ファンから必要とされる要素を吸収し、常に変化し続けるユニットこそがCHAOS(ケイオス) です。
2018年末には、CHAOSの矢野通選手を本隊の真壁刀義選手がたすけたことにより、本隊と越境タッグを結成するようになりました。その流れから、両軍トップのオカダ・カズチカ選手、棚橋弘至選手もタッグを組む機会が増えています。
2019年初頭はCHAOSと本隊は友好関係を結んでいるようですが、どうなるのでしょうか?