
新日本プロレスには、ヘビー級のシングル王座が3つ存在しています。
IWGPヘビー級王座、IWGPインターコンチネンタル王座、そして、NEVER無差別級王座です。
いちおう3つの王座は同格とされていますが、プロレスファンで、本当にそう思っている人はほぼ皆無。
ほとんどの人は、IWGPヘビー級王座とIWGPインターコンチネンタル王座に比べ、NEVER無差別級王座は格下の王座という印象を持っています。
なぜでしょう?
今回は、新日本プロレスで、NEVER無差別級王座が格下と思われる理由を考えます。
鈴木みのるがNEVER無差別級王座を奪取
2017年4月27日(金)、広島で行われたタイトルマッチで、鈴木みのる選手がNEVER無差別級王座のベルトを穫りました。
鈴木みのる選手は、2017年初頭に新日本プロレスに戻ってから、初めてのベルト奪取です。
ただし、現状のところ、鈴木みのる選手はベルトを穫っただけ。
ベルトというのは穫っただけではあまり価値がありません。
ベルトそのものには価値がないからです。
なので、ベルトを穫った選手は、ベルトの価値を高める必要があります。
実はこれが大変で、これができずにベルトを手放したレスラーは山ほどいます。
では、鈴木みのる選手はどうやって価値を高めるのでしょうか?
人はいつ死ぬと思う…?
鈴木みのる選手が愛読する漫画「ONE PIECE」では、次の有名なセリフが残されています。
人はいつ死ぬと思う…?
心臓を銃で撃ち抜かれた時……違う。
猛毒のキノコスープを飲んだ時……違う!!!
…人に忘れられた時さ…!!!ONE PIECE 16巻第145話から引用
ドラム王国に住む医者のDr.ヒルルクが死ぬ間際、弟子のトニートニーチョッパーに残したセリフです。
この後、Dr.ヒルルクは死んでしまいましたが、死後も多くの人々の記憶に残り続けています。
つまり、Dr.ヒルルクは死んでいないのです。
これをプロレスに例えると、ベルトを持っていても、記憶に残る試合をしなければ、存在しないのと同じということです。
王者がいて挑戦者がいて、タイトルマッチも行われていたとしても、記憶に残らなければ、そのベルトは存在しないのと同じなのです。
NEVER無差別級王座が格下の理由
改めて説明しますが、NEVER無差別級が、他のベルトよりも格下に感じるのは、他の王座に比べて記憶に残る試合がないからです。
ベルトの価値は、ベルトそのものというよりもベルトが紡いできた記憶に左右されるもの。
その点、IWGPヘビー級王座は長い歴史の中で、IWGPインターコンチネンタル王座はIWGPヘビー級王座と対極に位置することで価値を上げ、たくさんの記憶に残る試合を紡いできました。
しかし、NEVER無差別級王座には、記憶に残る試合がありません。
だから、格下の王座という印象を持たれるのです。
新日本プロレスのお宝をすべて奪う
幸いなことに鈴木みのる選手は、記憶に残る試合を作れるレスラーです。
2015年、2016年と、ノアに戦いの場を移したとき、無風だったリングに「対立抗争」という風を巻き起こしました。
最後はベルトを穫られて撤退という結果ながら、約2年間に渡ってファンを熱狂させました。
その結果が、2年間ぶりに帰ってきた新日本プロレスのリングで、いきなりIWGPヘビー級王座への挑戦権という評価に繋がったのです。
残念ながらタイトルマッチで敗戦し、いったんは存在意義を見失いかけますが、NEVER無差別級を穫って、再びトップ戦線に戻ってきました。
鈴木みのる選手の、当面の仕事は「NEVER無差別級王座をIWGPヘビー級王座、IWGPインターコンチネンタル王座と同格まであげること」です。
そのためには、前哨戦から、試合自体を含めて、ファンの記憶に残るタイトルマッチを提供しなければいけません。
それで初めて、ベルトを穫ったと認められるのです。
「新日本プロレスのお宝をすべて奪う」と宣言した鈴木みのる選手。その手腕が試されます。