キン肉マンは世界一の興行団体!
本日、紹介する書籍は、40歳以上の男子なら皆大好き!キン肉マンの作者である、ゆでたまご大先生の著書。
「ゆでたまごのリアル超人伝説」です。
懐かしのキン肉マンの名場面や超人を振り返りながら、プロレスとしての“試合”や“大会”を中心に語ります。
興味深いのは、作者がキン肉マンという作品を漫画ではなくプロレス団体のひとつとして捉えていたこと。
そして、ゆでたまご先生も作者ではなくプロモーター(興行主)として作品に携わっていたことです。
キン肉マンを読んでいた当時、私は小学生であり、まだプロレスに興味を持つずっと前。
プロレスといえば、馬場・猪木ではなくキン肉マンであった私にとって、「ゆでたまごのリアル超人伝説」は感心することだらけ。
本書を読んだあと、居ても立ってもいられず、近所の漫画記載に走り、キン肉マンを読破しました。
何よりも選手の格を大切にする名プロモーター
全体を通して感じたのが、ゆでたまご先生が超人一人ひとりに非常に気遣いを持っているところです。
直前の試合で下げた(負けた)超人は、次の試合で必ず上げて(勝つ・見せ場を作る)、レスラーとしての格を落とさないよう気をつけているのです。
例えば、夢の超人タッグ編では、初戦で無残に敗退したロビンマスクを、次のキン肉星王位争奪編では、敵将であるキン肉マン飛翔(マリポーサ)から勝利を挙げさせています。
また、ザ・ニンジャのように勝ち星に恵まれていない超人でも、独創的な技を持たせ、負けるときは派手な散っていく姿を描き、独特の役割を持たせているのです。
団体のエースはキン肉マンという路線は守りつつも、そこには誰一人として無駄な超人はいない。
全員に何からしらの見せ場を用意するという、非常に難しい作業をゆでたまご先生は行なっていたのです。
このあたり、自身をプロモーターとして作品に関わっていた所以です。
逆パロスペシャルこそ、正調パロスペシャル
キン肉マンの連載が終わり、私がプロレスに興味を持ち出したころ、「プロレス技大百科」(正確なタイトルは覚えていません)なる書籍を購入したことがあります。
これはタイトルの通り、世に存在するプロレス技の大半を網羅した本です。
基本的なドロップキックやボディスラムから、当時は最先端の大技であったムーサルトプレスや卍固めなどが写真と解説でコト細かく説明されているのです。
まだ見ぬプロレス技に心躍らせながら熟読していた私は、ある技の写真を見て不思議に思いました。
パロ・スペシャル
ジャッキー・パロなるイギリスの選手がオリジナルホールドとして開発した技のようですが、私たちキン肉マンファンにとって、パロ・スペシャルといえば、言わずと知れたロボット超人ウォーズマンの必殺技。
第21回超人オリンピック ザ・ビッグファイトで、ウォーズマンは完全無欠のフィニッシュホールド、パロ・スペシャルを武器にキン肉マンを大いに苦しめました。
笑うことを忘れたはずのウォーズマンが機械的な笑みを浮かべ、キン肉マンにパロ・スペシャルを決める姿は鮮明に脳裏に焼きついています。
プロレスごっこをしても、パロ・スペシャルは必ず一度は繰り出された大技です。
パロ・スペシャルは私たちにとって、印象の強い特別な技なのです。
しかし、「プロレス技大百科」に掲載された写真は、どうにもこうにも勝手が違う。
明らかに、私たちが認識してきたパロ・スペシャルと形状が違うのです。
簡単に言うと、ウォーズマンのパロ・スペシャルと前後が逆。
もう、見た感じからして、明らかに違う技なのです。
既に知られている話なので種明かしをしますが、元祖はやはり、ジャッキー・パロのパロスペシャルが本家本元。
正確には、ウォーズマンのパロ・スペシャルはリバース・パロ・スペシャルになるのです。
種明かしをすると、これは作者であるゆでたまご先生が、パロ・スペシャルの正確な形状を知らずに想像で書いたから。
しかし、私たちにとって、あくまでパロ・スペシャルといえばウォーズマンのパロ・スペシャルです。
事実を知ったからといって、記憶を簡単に修正できるほど簡単ではありませんでした。
今でも、パロ・スペシャルいえば、ウォーズマンのパロ・スペシャルなのです。
ところで、なぜソビエト連邦(当時)出身の超人であるウォーズマンがイギリスのレスラーであるジャッキー・パロの技を知っていたのか?
それは、ウォーズマンに技を教えたのが、イギリス出身のバラクーダ(ロビンマスク)だったからなのです。
このあたり、最初から考えていたのか偶然なのかはッハッキリしませんが、それでもそんな些細なつっこみを気にしないだけの勢いを当時のキン肉マンは持ってたのです。
キン肉マン、打ち切りの危機!
アメリカ遠征編の話にも触れます。
第20回超人オリンピック編で優勝したキン肉マンは世界の強豪と闘うためにアメリカへ渡ります。
当時アメリカは、WWF(現WWE)が大きな力を持つ前で、州ごとにテリトリー争いが行なわれておりました。
キン肉マンの世界でも、超人協会と超人同盟、超人評議会が登場し、キン肉マンはリングのみならず、リング外の抗争に巻き込まれるのです。
このあたり、本書でも述べられておりますが、読者に大変不評で一時は連載打ち切りの瀕したと述べられています。
団体同士の抗争というテーマは少年誌には難しいというのが一番の理由です。
私も、コミックスで読み返していたのですが、派手な超人オリンピックに挟まれた、このアメリカ遠征編は非常に地味な印象を受けました。
決してつまらないというわけではありませんでしたが、盛り上がることもなかった。
スカル・ボーズやデビル・マジシャンといった魅力的なキャラクターを出しながらも、あまり盛り上がることなくキン肉マンの遠征も終了しました。
それが時を経て、今読み返すととても面白い。アメリカ遠征編の続きを読みたくなってきます。
現在、キン肉マン二世が連載中ですが、どこかでアメリカ遠征編を深く掘り下げた外伝を読んでみたいものです。
ラーメンマンは前田日明だった!
キン肉マンと平行して、ある漫画にも夢中になりました。
キン肉マンに登場したラーメンマンを主役とした外伝的物語なのですが、当時珍しかった中国拳法を題材としており、シリアスな展開が非常にカッコいい。
落ち着いてみると、変てこな造詣のラーメンマンも渋く描かれており、キン肉マンよりやや大人向けのストーリーでしたが、そのテイストが私たち少年の心を貫きました。
当時は、友人達の間でどちらの漫画が面白いか議論が巻き起こることもしばしば。
しかし、それすらも作者であるゆで卵先生の手の平の上で踊らされていたに過ぎません。
なぜなら、「闘将!!拉麵男」はプロレス界で言うところの、新日本プロレスから派生した新団体、UWFであったのです。
そう、ラーメンマンは前田日明。
「闘将!!拉麵男」は、キン肉マンからのスピンオフ作品でありながら、キン肉マン以上の人気を得ることに成功したのです。
また、「闘将!!拉麵男」が連載中は、意図的にキン肉マン本策にラーメンマンの登場を控えていたというのですから恐れ入ります。
キン肉マンを知らないプロレスファンに読んでもらいたい
このように、「ゆでたまごのリアル超人伝説」は
我々アラフォーファンにとって、非常に心に突き刺さるエッセンスが漫画の随所に散りばめられているのです。
キン肉マンど真ん中の世代はもちろんのこと、キン肉マンを知らない方にも読んでもらいたい。
冒頭で、私は現実のプロレスを知らずにキン肉マンを読んだと書きましたが、それとは逆に、キン肉マンを知らずにプロレスを見ているファンは、この本を読んでどのように感じるのでしょうか。
いや、それだときっと読んでも何のことだか分からない状態になるのは明白。
もし可能であれば、キン肉マンを読破してからこの本を読んでもらいたい。
いったい、どのような反応を起こすのでしょうか。
楽しみです。
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